先日のニュースポストセブンにおいて、歯科技工士の過酷労働についての記事…。
記事の内容を要約すると
歯科医師が技工代をダンピングするから、1個400円の仕事を一日30~40個をこなしてゆっくり寝る時間もない。
月の売り上げは40万円でそのうち6割が経費だと言う。
この内容からすると、「歯科医師だけが設けて歯科技工士が過酷労働を強いられている」様な記事だが総合的な実態は全く違うし、内容に重大な大ウソまがいの言い回しもある。
今回はその解説をします。
問題の記事はこちら
歯科技工士 銀歯1個の製作費400円、連日20時間の過酷労働
技工料金が安い?
まず、1個400円の銀歯を作っているとあるが、これはネット検索で「インレー歯科技工料金」と調べて頂けるとすぐに判明するが、どの歯科技工所のホームページをみても400円という銀歯は全くない!
銀歯で最も安い「インレー単純」でも1000円はチャージしている。
???
大ウソか?
そもそもダンピングについての話をさせて頂くと、歯科医師側から発信している訳ではなく大手の歯科技工所などが仕事を取るために値段を下げてアピールしているのが発端である。
しかしこれは世の中のどんな商売でも同じで、他社よりも抜きんでるために価格を下げると言うのはよくある事である。
ただし、これが技工料金の基準になっていくと言うのも事実である。
また、大手の歯科技工所では機器や材料も最新のものを取り入れ、製作物も綺麗で対応もしっかりしている。
そのため、小さい個人の歯科技工所では全く太刀打ちできないのが現実である。
結果、歯科医師に選ばれなくなる事を恐れる歯科技工士は技工料金を大きく下げざるをえない。
では、それを防ぐためにはどうしたら良いのか。
答えは単純で技術や仕事の質を高めれば良い。
そうすれば、料金での勝負はしなくとも自ずと仕事は来る。
もう一つは経営術を磨く事である。
どの大手歯科技工所も最初は個人の小さなところからスタートしている。
仕事のお金が安いとか、寝る時間がない事を決して人のせいになどしている暇なく、がむしゃらに駆け抜けた結果そうなったのだ思う。
上記の「歯科技工技術の向上」と「技工所経営術の向上」、これが出来ない人はそもそも独立すべきではないのではないだろうか?
これは下記の記事にもあるように歯科医師でも同じ事が言える。
➡開業歯科医は勤務医時代の年収を下回る。
技工料金6割が経費?
これは大変申し訳ないが、歯科技工士がこれを聞いてどう感じているだろう?
少なくとも私の知っている複数の歯科技工士の話によれば、「8割」は利益と言う。
もちろん、機材などの初期投資は除きますが、これもどんな商売でも同じ。
利益率の話をする時にランニングコスト以外の話を持ち込む人はいない。
従ってこの経費6割は大ウソか、よほど経営努力をしていないという事になる。
歯科医院側の利益を知る
上に1個400円の技工料金と書いてありますが、では歯科医院側はこれを患者さんにいくらの診察代になっているかご存知だろうか?
おそらくインレーと呼ばれる保険適応の部分金属冠の小さいものだと思われるので、装着するセメント代金含めて3220円(2016.4.1現在)である。
(保険診療であるため患者負担金は1000円ほど。)
9割も利益ではないかと思われるが、この裏に隠れている歯科医院側が負担する技工料金がある。
それは「金属代」だ。
金属を用いた歯科技工物作製時の金属代金は、歯科医院側が負担する暗黙のルールとなっている。
これが実はバカにならない。
保険の金属は金銀パラジウム合金を使用しているが、これのグラム単価は(製品や購入先によってはピンキリではあるが)現在約1100円ほどである。
小さい部分金属冠で使用する量はおよそ0.3~1.0グラム程度。(虫歯の大きさ深さで変動)
間を取って0.6グラムくらいとしたら、歯科医院側が歯科技工所に技工料金以外に支払う金属代は660円。
すなわち、3220円-1060円=2160円となる。
これが、多くの歯科技工所の様に1000円の技工代であれば、1560円という事になる。
これを歯科医師は大体30分くらいを費やして患者さんに装着するわけだから、歯科医師にとっても超超超薄利な仕事である事は理解して頂きたい。
30分で2000円…
歯科衛生士2人時給1500円、歯科助手1人が時給1000円だとして、30分で人件費だけで2000円??
実は歯科医院の方が利益は出ていないのです。
そもそもの考えが違う
歯科医師がダンピングしてどうのこうの言っているが、そもそも保険診療は国で診療報酬が定められています。
上限30分で3000円しか売り上がらない設定になっているのです。
歯科医院側はここから引き算して行くしかない訳なので、保険診療における報酬が国によって減らされれば当然歯科技工所の価格も下がらざるを得ない。
アメリカの様では日本で初回5000円(患者負担1500円)で行われる歯の根の治療が、約1500ドル=15万円します。
そんな国であればこそトップテクニシャンともなれば、一本歯を作る技工料金は2000ドル=20万円と言う歯科技工士も存在する事が出来ます。
しかし、日本においてはこの保険制度があるからこそ、そこまで歯科治療費が上がる事はありません。
それに伴って価格の安いものはあまり大切にしない人間の感覚からか、日本人が感じる「歯の価値」は世界的に見てもかなり低い。
日本の首相の歯並びが世界でなんと言われているか是非検索して頂きたい。
情けない限りではありますがそれが現実であり、国の制度や国民の意識が変化しない限りは永久にこの状況は変わる事はないでしょう。
国の設定した最低品質の安い保険診療は、歯科技工士だけでなく、歯科医師も泣かされている訳である。
これが今回のニュースポストセブンの記事に対する正しい見解である。
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