歯を削らない虫歯の治療法として最近多くのメディアなどでその名前を耳にする『ドッグベストセメント』。
必ずしも全ての虫歯に適応できる訳ではなく、全く削らないくても良いという事でもない。
しかしながら、とても素晴らしい材料である事には違いないので、その性質や開発された歴史などを改めて理解して頂くためにドッグベストセメントの説明を引用して紹介致します。
近年歯科界ではIDA(国際歯科連盟)によりMI(ミニマルインターベンション:最小限の侵襲)の概念が提唱されて以来、歯質を保存し歯牙の寿命を長く保つために様々な治療方法が考案されて来た。
特に3Mix-MP法などは代表的な治療方法であり、数多くの歯髄保存を可能として来た。
アメリカでは1990年代Dr.Fraserがロマリンダ大学の協力の下でCopper(カッパ―)をベースとした歯科用セメントによる治療方法を開発した。
その調合製剤(ミネラル)の効果は素晴らしく、カッパ―セメントの様な副作用がない事も明らかになっている。
その為2001年よりCooley&Cooley社から、Dr.Fraserの命名による『Doc’s Best』の商品名で販売されている。
従来の齲蝕治療法は感染が疑われる歯質を全て取り除くのが一般的であり、感染症に対して外科的に削除するのが手法であった。
齲蝕は感染症であり罹患した歯質内の最近をコントロールすれば歯質の保存が成り立つ。
齲蝕部位を物理的に除去することは効果的であるが、二次的な齲蝕が再発する事はよくある事である。
従来の保存修復の耐久年数に関する研究から、次の事が分かっている。
①修復治療総数の70%について、その主たる理由は依然として修復歯の再発齲蝕の治療のためである。
②2級合金インレーの機能不全の50%は、7年以内に再発している。
医科界において、感染症の治療と言えばメディケーションと自己免疫の強化・向上が中心であり、感染部位の切除などは最終手段というのが一般的な考え方である。
しかし、歯は再生能力を持たない特殊な器官のため、罹患した部分は削除しなければならない。
そのため、理想的な歯科のセメントに求められる要件は次のとおりである。
①化学的に変化しない無機質である
②抗齲蝕誘発性が長持ちする
③細胞毒性・変異誘発性がなく、生体適合性に優れている
④必要な微量元素を供給できる
⑤微小可溶性(Infinitesimal Solubility)である
⑥信頼できる合着塗布剤(Cementation Application)である
これらの条件を満たしているのが『Dog’s Best』 Copper Cement(Red/White)である。
『ドッグベストセメント』カッパ―セメントの操作性は、普段から使用していたリン酸亜鉛セメントと同等である。
保管時の光や湿気はそれほど気にする必要なはい。
歯科医師のみならず患者にとっても「削らない」「歯髄保存」という治療は大歓迎されるものである。
『Dog’s Best』 Copper Cement(ドッグベストセメント)は銅を主として、リン、銀、鉄などのミネラルを含むが、それらが半永久的に放出するイオンとともに作用する事で、バイオフィルムを破壊する。
この銅を有したカッパ―セメントとコーパライトの組み合わせにより、象牙細管へと浸透することで象牙質への修復作用が発現する。
つまり亜鉛、マグネシウム、リン、銅などの微量ミネラルが象牙質を再生させるものである。
銅イオンは微量であっても強力な殺菌作用をもっており、古来より殺菌法として幅広く用いられてきた。
身近な話では「銅の洗面器を使えば、眼病が治る。」、「銅の壺の水は腐らない。」などといった生活の知恵は、銅のもつ殺菌力に由来する話である。
従来の化学薬品や抗生物質とは全く異なり銅イオンの殺菌メカニズムは、安全で幅広い効果をもたらすとして様々な分野で注目されている。
簡単に銅の殺菌メカニズムを解説すると、イオン化により電子欠損状態(求電子体)になった銅イオン(Cu2+)が、細菌の細胞質表面の陰イオンに接触し、その後細胞内へと浸透する。
そこで電子イオンを奪う事により細胞内のATPの生産回路を阻害する。
その結果、組織体のバランスが崩れ、細菌の生命活動を攪乱して死滅させる。
このようにして細菌の細胞に直接的なダメージを与えて行く物理的な殺菌方法である。
従って『Dog’sBest』コーパライトを用いる事で、象牙細管や軟化象牙質内に生息している細菌を殺菌する事ができる。
また、軟化象牙質が数か月から数年で硬化するため歯髄の保護にも優れている。
そのため、感染象牙質を削除せずとも「Dog’sBest」カッパ―セメントを裏装セメントとして齲窩に用いる事で、軟化象牙質の保存が可能になる。
また象牙質の保存は歯髄の保存へとつながる。
なお、『Dog’sBest』が細菌発生の元となるバイオフィルムを根絶する事は、Sturman P,PhD、Costerton W,PhD.らによる滞留培養液における微生物検査(2005年1月18日モンタナ州ポズコンのモンタナ州立大学バイオフィルム・エンジニアリングセンター)で明らかになった。
つまり、バイオフィルム形成をテストした結果、『Dog’sBest』カッパ―セメントについて、いずれのタイプにもバイオフィルムの集落は見られないと報告している。
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